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執筆者の写真浅野千恵

どんな音楽を目指すか(1)

更新日:2023年6月13日

コンクールに参加していた頃、「上手く弾きたい」「間違えないようにしなくては」「予選を通らなかったら恥ずかしい」などと考えながら練習していると、いざ本番では、自分が自分でないようなあがり方をして、どうやって弾いたか覚えていないし、良くない演奏になりました。つまり、音楽そのものでなく、コンクールなどの結果を目標に練習していた時は、全くダメでした。


それに対して、レッスンを受けた後、多角的に練習し、自分の弾きたい音楽がはっきりしてきて、それを表現しようと夢中になれた時は、舞台に出る時「間違えてもいい、思い切り自分の音楽を演奏してこよう」と思えたし、緊張はしても、地に足が着き自分の表現をしているという感覚があり、演奏に伸びやかさが出て良かったのか、結果にも表れました。


以前、フルトヴェングラーの「英雄」を聴いて、目指したい方向が分かったとブログに載せましたが、それ以来、コンクールの時でも、そこで「自分の音楽が表現できたかどうか」が、目安になっていました。その時のベストな表現を出し切ることができれば、「結果がどうであっても、もういいや」、と思っていたのです。実際は、自分の音楽が表現できたと思えた時は結果が良かったので、逆にそれが出来なかった時は、ダメなんだと分かりました。


それ以来、自分の内なる感覚に敏感になりました。ただ当時はそれを、どうしたらレッスンではなく、自分で充実させられるか、いろいろ自分でやってみても「何か違う」とは分かるのですが、具体的にどうしたらいいのか分からなくなってしまいました。

音楽の楽しさを忘れてしまったり、コンクール入賞者として、恥ずかしい演奏はできないと思い詰めてしまい、また「上手く弾かなきゃ」に戻ってしまっていたのかもしれないと、今では思います。

今は、もう音楽を楽しんでいるので、大丈夫です。


ちなみに、音楽をイメージするといっても、難しく考える必要はなく、ただ歌うだけです。

つまり音楽の根源に戻るということです。


ヴァイオリンなど、楽器で演奏する「器楽曲」は、歌よりも難しいこと(高音、重音、速いパッセージなどなど)ができてしまうため、歌うのが難しく感じるかもしれませんが、同じです。

歌う時に、「ここはちょっと出すようにしようかな」とか、「ここは暗い音にしてみよう」とか工夫する。そして、弾く時には、その時歌ったように弾くだけです。その時自分のイメージした音と実際に出している音が一致しているか、一音一音確かめながら弾くようにできれば尚良いと思います。


自分でイメージしている音楽と、技術のギャップが少なければ少ないほど、充実感も高くなると思います。


後にハヴァシュ先生のご著書を読んだ時に、「私が昔感じていたことが書いてある…」と嬉しく、でも当時私はハヴァシュ奏法ではなく、緊張で多少固くなることからは解放されていなかったので、「ハヴァシュ奏法で弾くともっと上がらず楽に弾けるようになるのか…!」と更に驚きました。


((2)に続く)



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