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執筆者の写真浅野千恵

コンクールについて所感(1)

更新日:1月14日

戦前から、国内外でコンクールは存在していましたが、私がヴァイオリンを一旦やめていた間に、こんなにコンクールが増えたのかと驚いています。

 

昨年は、芸高時代の親友、小林多美子ちゃんのお友達であるシャルヴァ青木奈緒子先生のお口添えで、日本クラシック音楽コンクールの本選(高校生、大学・一般の部)と全国大会(幼児、小学1・2年生の部)の審査に携わることができましたが、その時にいろいろ感じたことがありました。

 

自分も、学生時代、コンクールで良い演奏ができることを目標あるいは手段にして、表現を磨いていき今があるので、コンクールというのは、自分の音楽性や表現技術を高める手段として参加したり、本人も音楽家として歩みたくて、なおかつ優れた才能の持ち主が、世に出るきっかけとして参加するなら、健全な姿なのかなと思います。

 

ですが、時々、入賞できなかったからがっかりして、自分(あるいは我が子)には見込みがないんだと、コンクールを物差しにして、上手なのに辞めてしまうお子さんがいると聞いたり(最近のコンクールはレベルが高いので、入賞されなくても上手なお子さんはたくさんいます。本人が嫌々弾いていたなら、ご本人の意思に任せても良いと思うのですが)、お子さんご本人は小さくて訳も分からず、親御さんの方が一所懸命が嵩じて虐待寸前、という話も耳にします(今に始まったことではありませんが…)。

 

確かに、ある一つのことを究めるには、それぐらいの厳しさがないと難しいというのは否定しませんし、小さい時に音感や技術を習得する方が後々楽だというのは確かですが、今は、幼児でも上級の曲を弾くお子さんも増え、そのようなスーパーキッズを目指すがゆえに、行き過ぎにならないといいな…と、先日のコンクールの幼児・小学校低学年の全国大会を聴いて、この中には、そんなお子さんがいないといいのだがと複雑な思いになりました。


出場者のお子さん方が、年齢に比してあまりに見事な演奏が多く、本当にこのお子さんは年長さん、小学校1年生、2年生なのだろうかと採点に苦労したので…

 

音楽の表現技術は、大きくなってからでも十分伸ばせます(私が良い例かなと思っています)。高学年になって、急に大人びた表現ができるようになるお子さんもいます。伸び方は、お子さんの個性と与えられた環境、受けた刺激、などでどんどん変わりますし、本当にそれぞれだと思うので、「小さい時にできていないから、才能がないわけではない」と、私は思うのです。。

 

ただ、伸ばすためには、土台がなければ伸ばせません。その土台は、子どもの時に作られます。子どもの時から一流のものを知り、その子の琴線に触れると、子どもはそれを目指すようになります。

 

私も、昔鈴木メソッドで、鈴木鎮一先生が、大家のレコードをたくさん聴きましょうとおっしゃっていたので、母がクライスラー、ティボー、グリュミオー、パールマン、チョン・キョンファなどたくさん一流の演奏家のレコードを買って聴かせてくれました。そのため私は「あんな風に弾けるようになりたい」と憧れ、目標にして、主体的に頑張ることができたような気がします。

 

音楽とは本来楽しいもので、音楽を学ぶということは、人生の一部で、それが好きなら突き詰めればいいし、他にやりたいことがあるなら、そちらに主軸を移していく、というような姿が理想なのではないかと思っています。


ただ、人生に正解はないので、どちらを選択するか、ということでしかありませんし、技術の習得や音楽性を高めるためには、ある程度時間をかけないとできない、ということから、だんだん本質から逸れて、楽しさを忘れていってしまうのかもしれません。

 

どんな選択をしたとしても、本人も、周囲の人も、不幸になる選択だけは、避けてほしいと願うばかりです。。

 

ただ、人生においては、いろんなことが絡み合うがゆえに、良かれと思ってした選択が、良い方向に行くとは限らないこともままあります。そんな時に大事なのは、できるだけ感情を入れずに、物事を中立的、かつ多面的に見て、その時点でできるだけ客観的に良いと思われる方向に進むことかなと思っています(これは、自分自身に言い聞かせているところもあります)。

 

小さい頃突き詰めて神童と言われた人の中に、成熟の過程において、一旦悩み、苦しむ人が少なくないのは、あまりに親子共々無我夢中でやってきて、自分を振り返る余裕がなかったためではないかと推測しています。成長過程で、本人がある程度納得して進んでいたり、強い心の持ち主なら問題はないのですが、そうではなかった時に、余計な心の負担を、本人が感じてしまったとしたら、とても残念なことだと思います。

 

厳しさを求める時にも、本人にちゃんと説明して、主体的に取り組めるように、手間はかかっても工夫するのが理想なのではないかと思いますが、それでも、将来もしかしたら悩んでしまう時が来るかもしれません。その時も、親御さんは否定せず、その気持ちを受け入れてほしいなと願います。親御さんしか、本当の味方にはなれないのですから…

 

理想通りいかないことももちろんあると思いますが、その時はフォローすれば良いと、大らかな気持ちで、お子さんに寄り添ってほしいと思います。

 

コンクールに関しては、良い点もたくさんありますし、まだ色々思うことが多々あるので、また、ブログで触れたいと思います。




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