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執筆者の写真浅野千恵

昔、言われたことで…

昔、エリザベート王妃国際コンクールに参加した後のレセプションか何かで、そこに居たベルギー人の方から、「東洋の演奏家が多く入賞するけれど、なぜ日本人の貴女が西洋の音楽を演奏するのですか?」と聞かれたことがありました。


その時は、自分でも「なぜヴァイオリンをやっているのか?」「日本のことを良く知らないのに、外国の楽器であるヴァイオリンを、さも良く知っているかのように弾いているのは何故なんだろう?」と葛藤があった時期だったので、上手く答えられなかったのを覚えています。


また、海外では、日本のことを聞かれる機会が多くありましたが、日本独自の文化や伝統について、ほとんど説明できないことに愕然としたりもしました。

自国のことをよく知らないのに、どうして西洋の音楽を学んでいるのだろう?と…


でも、今は「クラシック音楽やヴァイオリンが好きだから弾いています。あなた方の国やヨーロッパで発展したクラシック音楽は、こんなに世界で広まっていて、本当に素晴らしいですね。」と自信を持って言えます。


好きなら、理屈はいらない。こんな簡単なことなのに、当時はその意識は全くありませんでした。気づいたら、ヴァイオリンを弾いていて、あれよあれよという間に、音楽の道に進んでいた。好きかどうかなんて、考えたことがありませんでした。私が精神的に幼かったのだと思いますが…


一旦離れて、音楽やヴァイオリンの素晴らしさを再認識でき、今ではヴァイオリンを弾くことに迷いはありません。


人間は、生きているだけで必ず何かを傷つけている存在だと思いますが、音楽や美術を含む芸術は、人間の生み出した最高に素晴らしいものだと感じています。


そんな素晴らしいものに携われることへの幸せに感謝しながら、これからもめげずに頑張りたいと思う今日この頃です。

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