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執筆者の写真浅野千恵

自分が歌うように、ヴァイオリンを弾く

更新日:2022年10月1日


ハヴァシュ式アプローチで、根幹部分で大事だと思った考え方が、


「みずからの内にある音楽的イマジネーションを外に向けて放つ」

(『あがり』を克服する/カトー・ハヴァシュ著:今井理瑳、

藤本都紀訳 音楽之友社)


ように演奏する、ということです。


私自身、それができるようになって初めて、内なる充実感を

感じることができ、「あがり」との付き合い方が分かるようになった、

という経験があったからです。


そして、それができた時には、コンクールの場であっても、

予選に通りたい、とか、入賞したい、などの結果よりも、

「自分の音楽を届けるために、全力を尽くしたい」と

思えるようになりました。


「みずからの内にある音楽的イマジネーションを外に向けて放つ」、

つまり、自分の言葉(表現)でこの曲を弾いている、と思える時は、

楽器を通して自分が歌っているような感覚でした。

そしてそれができている時は、多少間違ってしまっても、

充実感の方が大きく、楽しさの方が勝ることも感じていました。


でも当時は、声に出して歌ってから弾く、という習慣がなかったので、

練習している時はその充実感を得られない時がありました。

そんな時は、「自分で歌うとしたら、どんな風に歌うだろう?」と

原点に立ち戻り、楽器で歌うように弾くと、自分のしたい表現が

分かったりしていました。


私は、小さい頃はハヴァシュ式アプローチで

ヴァイオリンを学んでこなかったので、そこに至るまでに

長い時間を費やしてしまいました。

また、若い頃はハヴァシュ・バイオリン奏法を知らなかったので、

かなり力が入っていました。後に、この奏法を学んで、逆に

力が抜けることで、こんなに楽器が響くのかと驚きました。

この感覚(初めから楽器で歌い、響かせること)を

初めて楽器を持った時から感じることができるのが、

ハヴァシュ式アプローチにより作られた初心者向けの教本

「弓は踊る」「弦は響く」であり、私が感じたような充実感を、

習いたての方でも、どんな方でも、感じることができます。


残念ながら、私はまだ完全にハヴァシュ・バイオリン奏法が自分のものに

なっておらず、特に和音を弾く時は、年のせいもあるのか、

左指が固くなってしまっていたり、ボーイングが戻ってしまったり、

長年の弾き方が抜けないので困っていますが、

シャコンヌの初めの和音などで、4の指の取り方を

ハヴァシュ奏法にしただけで、肩の痛みがなくなり、弾き終わった後も

とても楽になりました。


これからも、ハヴァシュ・バイオリン奏法で自分の表現ができるように、

練習を重ねたいと思います。




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